状況・タイミングを見極めて人を動かす
「次の会社では事業企画の責任者、その次は大企業の経営管理部門のマネージャーと立て続けに転職をされていますが、この2社は大西さんにとってどのような経験になっていますか。」
どちらの会社でも、「人にどう動いてもらうか」ということを大切にしていました。企画部門でどんなに素晴らしい計画、企画を立てても、実行しなければ何の意味もありません。
1社目は、事業企画という部門名でしたが、実際は経営企画業務を担っており、従業員に気持ちよく動いてもらう方法やネゴシエーションを模索しました。『北風と太陽』のようなコミュニケーション力が身に付いたと思います。日本語か英語なのかの違いはありましたが、次の大企業でも同じです。有意義な経験ができました。
「新日本製薬では約2年半で上場レベルの管理体制を構築することに成功し、上場承認を得ました。ここではどのようなスキルが必要でしたか。」
上場するにあたっては、監査法人や証券会社などから目標や理想は提示されました。重要なのは、そこまでの道のりをどう進めていくかです。組織の熟成度合いや人員などのさまざまな要素とのバランスを鑑みて、どのタイミングでどこまでアクセル踏むかを見極めていかなくてはなりません。そういうスキルが大切だったように思います。
例えば、10〜15営業日締めを5営業日締めに短縮するとします。「概算が多くなってもいいから、一度5営業日締めでどうなるかチャレンジしてみよう」というように体感してもらう方が良いのか、短縮するためのプロセスを細かく説明し、理論的に納得して動いてもらう方が良いのか。タイミングや進め方など、組織に合ったやり方があるはずです。会社全体や各部門を見ながら、上場レベルまでどうやって到達するかを設計していくことが重要だと思っていました。
ちなみに、新日本製薬のときは、「ひとまず体感してみよう」という方針で進めました。本当に上場しているわけではないので、失敗しても大きな問題はありません。失敗したらその理由を洗い出して、改善策を考えるので、成長も早くなります。月次管理であれば、「また来月変えてみたらよい」と伝え、毎月違う方法を試し、失敗から修正し、失敗から修正しということを繰り返すうちに、気がついたらできるようになっていました。
私は、今でも部長に「いかにこけさせる(失敗させる)かを考えなさい」と言っています。「こけさせマネージメント」ですね。自転車と一緒で、転んだほうが早く上達するんです。でも、実際のところは、転倒するとハレーションが起きて、大変ですけれどね。
会社選びの基準
「大西さんは、どういう基準で勤務先を決めているのでしょうか。」
今振り返ると、社長との相性で決めていたように思います。何をするかよりも誰とするかのほうが大事なんですよね。どんなに面白いビジネスでも、この人と仕事をしたいと思わない限りは、面白くなくなってしまいます。
現職のHYUGA PRIMARY CAREの黒木(哲史)社長にも「社長がいなかったらやっていません」と伝えています。当社は、在宅患者向けに薬をお届けしたり介護や看護を提供したりする、地道なビジネスを行っています。社長や他の役員陣と「こうすればいいよ」「こういうことをしようよ」と話し合いながら生み出されたサービスが、社会の役に立てればいいし、結果的に売上に繋がればいいですよね。
「HYUGA PRIMARY CAREの管理体制の整備をどう進めていったのでしょうか。」
管理体制に関しては未整備な部分があったという感じでした。労務や総務は作りあげられている一方で、明らかに弱い領域もある。黒木社長が危惧していたのは、財務経理の責任者が定着しないことでした。そこで、まずは財務経理部門のレベルアップを図りました。ただ、特別な何かをやったということはなく、若いメンバーの「こうしたほうがいいと思います」という提案について「是非やってみて」とお願いしているうちに、向上していきました。また、中期経営計画や管理会計について、KPIから紐付けて数字を明確化したり、バランストスコアカードの考え方を取り入れたりと、私が手を動かして作っていきました。自分の経験から見えた方策を取り入れていきました。大まかに作成してからは、もっと綺麗にブラッシュアップしてくれるメンバーがいるのでお願いしました。
いつも助けてくれるメンバーに恵まれて、ありがたいです。