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CFOインタビュー
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HYUGA PRIMARY CARE株式会社/取締役 CFO 大西 智明 氏

経営者の生き方とは山頂がない山登りのようなもの。挑戦と努力を続けて社会へ恩返しをしたい

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※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚寿昭
INDEX

    IPOに必要なCFOの素養

    「前職も今回も短期間でIPOしましたが、それを達成するために重要なスキルはありますか?」

    2社だけなので偉そうなことは言えませんが、上場においては、スキルよりも、「この会社はこういう会社です」ということを理解してもらうことが大事だと考えています。証券会社の方や東証の方に納得してもらわないといけないので、そういう意味では、こういう会社だと理解してもらうために必要な情報を整理する力が大切かもしれませんね。
    あとは運も必要です。「大西くんは、運がいいよね」と言われることもありますし、僕自身もそう思っています。

    「大西さんは、会社全体や現場の課題を見つけて、それを解決する力がすごく高いと思うのですが、そういう力は必要でしょうか。」

    そうですね。小さいことを気にしてしまうと(緻密な作業をやり遂げてくれたIPOプロジェクトチームの仲間に怒られそうですが・・)多分CFO務まりませんし、IPOも難しいと思います。私はよく「大穴を開けるな」と言っています。小さい穴はいいので大きな穴を防ぐ。全体を俯瞰してみることができないと、事業再生の会社であれば倒産してしまいます。企業は案外あっけなく倒産してしまうものなんです。会社が潰れるレベルの大きな穴を作らない、IPOができないレベルの穴は埋めておく。それを見極める力は大切です。
    あまり熱中しすぎると俯瞰できなくなりますし、でも俯瞰しすぎると現場の人の感覚を理解できなくなってしまう。高度3000mから会社を見ることも大切ですが、ある程度地上近くで見ることも重要です。この目線感は意識すればできることだと思います。

    「社長のビジネスパートナーとしてどんなサポートをしていますか。また、社長との関係構築で気を付けていることがあれば教えてください。」

    黒木社長とは入社前からの約束ごとがあります。それは、最後は社長が判断するということです。だからこそ、私は言いたいことは全て言うようにしています。その上で、社長がどの判断をしても私は従います。黒木社長はきちんとみんなの話を聞くというスタンスを崩さない人なので、いい人に巡り合えたと感じています。

    「上場から1年が経過しましたが上場前と上場後でCFOとして大きく変わった役割があれば教えてください。」

    IRの重要性ですね。毎年100社くらいの企業が上場しています。それは言い換えれば、いつ忘れ去られてもおかしくないということです。上場後は、会社をどうアピールしたら知っていただけるかを考え続けなければなりません。特に、当社は事業が複数あり、何をしている会社か分かりにくい面があります。日本に在宅医療を広げていくというミッションを掲げており、在宅医療の現場で起こっていることを伝えていく役割もあると考えています。

    CFOの魅力とは

    「CFOという職業の大変な点と魅力を教えてください。」

    正直に言えば、重責で、大変なことが多いです。
    大手企業であれば、数字のみを追えばよいのかもしれませんが、IPOを迎える会社のCFOは、総務も人事も労務もシステムも、幅広く管掌する必要があります。事業部門と管理部門の2つに分けるとしたら、半分は受けもたないといけません。しかし、それをメンバーと一緒に乗り越えていくという醍醐味もあります。これは非常にやりがいがあることだと思います。
    もちろん大変なのですが、きっと10年後には、「ああいうことあったね」「こういうことやっていたね」とみんなで振り返ることができるでしょう。そういうところが魅力なのだと思います。頑張りすぎてしまうともたないので、良いバランスで働いていくいということも大切かもしれません。

    「最後に大西さんの夢をお聞かせください。」

    23〜24歳くらいのときに、『ジャック・ウェルチわが経営』という本を読んで、「経営者になりたい」と思いました。具体的に「こういう経営者になりたい」ではなくて、「一流の経営者になりたい」と感じたんです。「一流の経営者」に定義はないですよね。だから、逆に明確な夢を持たないようにしています。ただ、「一流の経営者」は、ずっと努力し続けなければいけないとは思います。この仕事は、山頂がない山登りのようなもの。ここまできたら山の頂上ということが永遠にないので、いつまで経っても登り続けなければいけません。だから、一流の経営者になるために、どこまで登れるか挑戦は続いていくと考えています。また、若い経営者を育てていきたいと思っています。私も、家族を含めて様々な人から支えられ、勉強し、好きなように仕事させてもらっています。この会社で日本に在宅医療を広げること、また、会社経営という職業人を増やすことで、恩返しをしていきたいと考えています。

    HYUGA PRIMARY CARE株式会社
    取締役 CFO 大西 智明 氏
    1998年 中部電力株式会社 入社 2006年 株式会社CMC 入社 2008年 株式会社ファースト工房 取締役CFO 2014年 新日本製薬株式会社 入社 2016年 楽天株式会社 入社 2016年 新日本製薬株式会社 再入社 2019年 HYUGA PRIMARY CARE株式会社 入社 2021年 東証マザーズ市場に上場