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日本ベンチャーキャピタル株式会社/代表取締役会長 奥原 主一 氏

CFOに求めることは、CEOが前向きな仕事に専念できる環境を作る覚悟と柔軟性

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※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚 寿昭
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    たくさん失敗する人がたくさん成功する

    「優秀なのに上場に運がない人がいます。逆に、転職した会社が必ず上場する人もいます。変な質問ですが、CEOやCFOには運がある人がいいのではないかと思うのですが、運についてどうお考えですか。」

    総合的に考えると、人間の持っている運は一律だと思います。運がよさそうな人も、見えていないだけで悪いことも起こっているのではないでしょうか。
    ただ、たくさん失敗する人がたくさん成功するというのは事実だと思います。失敗する人は良い体験もしています。失敗しない人は良い体験もしていません。CFOの立場だと、特に失敗ばかりに目が行きがちですが、そういう人は良い体験もしているはずなので、成功に近づいていると思います。
    人の運の話とは少し逸れますが、不動産には運気が宿っているような気もしています。上場会社がたくさん出る物件やインキュベート施設は実際にあります。

    ストックオプションの有効活用

    「ここ数年でベンチャーのCFOの報酬が上がっていきました。20年近く800万円から1,200万円でしたが、今は1,000万円から1,500万円程です。報酬の一つであるストックオプションもやる気を奮い立たせる道具のひとつですが、奥原様はストックオプションや現金報酬についてどのような認識をお持ちですか。」

    CFOの報酬は上がってきていますよね。

    CEOのカリスマ性が高いところは現金報酬を減らしてストックオプションを多めにできます。逆に、社長のカリスマ性が低いところは、どうしても現金報酬が多くなりがちです。私は、「現金報酬を高くして採用した人は、もっと高いところに奪われてしまう。頑張って1,200万円で採用した人は、1,500万円で奪われてしまう。優秀な人をつなぎ止めておきたかったら、CEOの魅力や会社の魅力を高めるしかない。そもそも、ストックオプションを多めにしてもCFOに就てくれる人を選ぶべきだ」と伝えています。30歳くらいの若い方であれば、ストックオプション多めで良いと思います。むしろそれで来てくれない人は採用しなくて良いのではないでしょうか。
    そういう意味で、ストックオプションは、相手が会社を見る評価指標にもなるし、会社が相手を見る評価指標にもなると思います。

    「10年程前から投資銀行出身者(特に外資)がベンチャー企業のCFOになるケースが増えてきましたが、失敗している方も見かけるので、活躍している投資銀行出身者の方はどのようなキャラクターか教えてください。」

    正直、投資銀行出身の方が活躍できるのは、ものすごくお金をたくさん集めるベンチャー企業だと思います。また、大きく集めたお金を有効に使って上場まで持っていける会社の比率は世界中どこを見ても少ない。投資銀行出身の方が参画されるのはありがたいことですが、成功確率が高いわけではなさそうです。

    CFOを目指す人へのメッセージ

    「これからCFOを目指す方へのメッセージをお願いします。」

    これからCFOとして活躍したい人は、その会社のサービスが好きかどうかで判断すればいいと思います。「この会社に興味があるから、少しでもお手伝いしたい」と思う会社であれば、腕を振るってみる価値はあるのではないでしょうか。一方で、その会社のサービスに興味がないと、厳しい状況に立たされた時に立ち向かうことが難しくなりますよね。

    「CFOは事業に対して興味を持つことが大事なのですね。」

    「ここが私の専門領域」と業務を限定するよりは、「みんなと一緒に事業を作っていく」という思いのCFOの方がうまくやれているような気がします。最初の能力が高くなかったとしても、色々とチャレンジしていれば、能力も高まってスキルアップしていきます。

    今後の抱負

    「最後に成長が止まっている日本において、VCに対する期待は大きいですが、奥原様の今後の抱負や取り組みたいことがありましたらぜひお聞かせください。」

    成長が止まっているというのはGDPのことですよね。しかし、少し前に、バブルピークの1988年と今の日経225の銘柄を比較したのですが、なんと7割が入れ替わっていることがわかりました。つまり、下剋上が起こる文化があるということです。確かにGDPは変わっていないですが、これだけ下克上が起きるのは、いい国なのではないかとも思います。また、30年間も生産人口が減少しているのにGDPが変わらないということは、1人当たりの生産効率は上がっていると見ることができるかもしれません。必ずしも、社会的に言われていることの全てが正しいとは限りません。

    私もよく、これからの日本はどうしていったら良いのかを考えるのですが、島国で人口が増えていかないことを考えると、スイスのような国を目指していくと良いのではないかと思っています。一人ひとりのスキルを上げる必要はありますが、トータルの生産量を追う時代ではないように思うのです。ちなみに、私はシンガポールはお金を右から左に動かしているだけで新しい価値を生み出していないと思っているのであまり評価していません。日本はアジアのスイスの立ち位置を目指していくと良いと思います。

    「NVCCが目指す姿を教えてください。」

    トップダウンで、「ここに投資すると決めたから」ではなく、キャピタリストの得意分野で好きな会社に投資すること、これが一番パフォーマンスが上がるし、大事なことだと思っています。自分が価値を理解していない、好きでもない会社に投資しても、あまりうまくはいきません。メンバーそれぞれが好きな会社に投資をするから、自動的にポートフォリオを組めるんです。私たちは起きている半分以上の時間を仕事に割いています。嫌いなことをやっていたらしんどいですよね。

    NVCCの社外役員は、ほとんど創業オーナーか中興の祖で、その方たちがなぜ年を重ねてもずっと仕事を頑張れるかといえば、好きなことやっているからです。嫌いなことをしていたら、元気で長生きすることは難しいと思うんですよね。だから、私も好きなことに打ち込んでいきたいです。

    日本ベンチャーキャピタル株式会社
    代表取締役会長 奥原 主一 氏
    1992年 東京大学工学部産業機械工学科卒 1994年 東京大学工学系研究科情報機械工学修了 同年  アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社、大手メーカーにて最先端の技術コンサルティングに関与 1998年 日本ベンチャーキャピタル入社 2008年 取締役投資部長就任 2009年4月 代表取締役就任