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株式会社アンビスホールディングス/取締役CFO 中川 徹哉 氏

CFOとして社会貢献性のある事業に関わりたい。「お金のプロ」がたどり着いたお金だけでは測れない思い

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※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚寿昭
INDEX

    会社の業績にこだわり続けて構築した社長との関係性

    「社長との関係性について教えてください。」

    創業者でもある社長とはいい関係性であると思います。現状、社長からこと細かな指示を受けることはほぼありません。私が入社する以前は、社長が全部門を管轄していましたが、現在は経理、財務、IRのみでなく、採用、開設支援など幅広い業務を私に任せてもらえています。一回り下の30歳ちょっとの実績がない、態度が大きい(笑)私を採用して、自分が創業した会社のナンバー2に据える。これは相当リスクがありますし、勇気が必要だと思います。私が社長の立場だったらできないと思います。私は、社長にそのリスクを取って頂いたことを本当に感謝していますし、その取ったリスクを圧倒的に上回る成果を上げたいという思いが強くあります。

    「CFOとしてどのようにビジネスサポートをしてきたか心構えも含めて教えてください。」

    私が大切にしていることは2つあります。
    1つ目は、CFOとして入社したので、「この会社の業績を上げ、市場での評価も上げたい」ということです。CFOの役割として時価総額の最大化はもちろんのこと、そもそもの業績改善に寄与したい想いを強く持っています。
    2つ目は、「社長が社長業務に集中できるように周辺業務を引き取りたい」ということです。伴走というとおこがましいですが、社長がすべき業務、又は社長しかできない業務というものがあると思っています。

    例えば、会社としてのミッション・パーパスの発信、ここは、私ではなく、創業者の社長が話す事で重みが一気に変わると思います。
    そして、ゆくゆくは私自身がしている業務もどんどん組織に落とし込み、私も今とは違う役割にチャレンジすることができれば、会社として一番良い姿だと考えています。また、社長はすごく数字にこだわる人です。この会社で誰が一番数字にこだわっているかといわれたら、「社長とCFO」と答えられるくらいこれからもこだわりを持ち続けたいと考えています。

    成果を出すために実行したこととこれからの課題

    「中川さんが入社してから現在まで3年の間に、時価総額は、コロナ感染拡大とともに550億円まで下がったところから現在の3000億円超と5-6倍になりました。これは中川さんの貢献が大きいと思いますがCFOとして主に何を実行してきたのですか。」

    株価は、利益と成長への期待によって決まると考えています。よって、利益と成長への期待をともに伸ばすということに集中して取り組みました。一つ目の利益は、実業でコツコツ積み上げるしかありません。簡単に言えば、より多くの施設を開設して売上を大きくし、効率性を高めて利益率をあげるということです。但し、実際はそんなに簡単なことではなく、多くの施設を開設するための体制を構築しないといけないですし、効率性を高めるといっても医療の会社なので単にコストカットするわけにはいきません。例えば、アンビスは営業利益率が非常に高い会社ですが、施設の従業員の給与は各地域でトップクラスです。その給与を維持・改善することや情報の透明性を高めるためにも、本社管理体制のもと、エリアマネージャー等の中間管理職をなくしました。

    二つ目の成長への期待は、投資家開拓を進めました。私が入社するまでは、海外投資家とほぼコンタクトがありませんでした。ほぼ0%の状態から、現在は会社関係者を除き、約6割が海外投資家となっています。また、現在100件程度の四半期IRを行っていますが、多い時は70件程度を海外が占めています。当社は、まさに海外の投資家によって支えられています。海外投資家との面談は全て私が引き受けていて、本当に重要なタイミングにおいて社長に出てもらうようにしています。私が粘り強く海外投資家とコンタクトしていなければ、また別の景色になっていたのではないかと思います。

    「四半期でそれだけのIRをやっているのですね。」

    そうです。年間で300件を超えていると思います。ただ、長い時間をかけているというよりは、集中的に実施しています。多い日は、朝から夜まで1日でIRを10件近く実施していることもあります。IRを多く実施するから他の仕事に手が回らないとならないように、IRの時期はIRが増える分だけ追加で働くという形にして、実業に影響を与えず、かつ、投資家との会話をできる限り維持するようにしています。投資家は、短期の方と中長期の方を明確に分けています。投資家の最終目的は事業を応援することに加え、しっかり利益を稼ぐことです。短期の投資家にはしっかりと短期の情報を伝え切り、中長期の投資家には中長期の情報を伝え切ることが重要だと考えております。但し、理想としては中長期的に支えて頂きたいという想いはあるので、そこはお伝えした上で、四半期で投資されるのであれば、それはそれで1つの考え方だと受け止めています。

    「現在プライム上場企業のCFOとして更なる企業価値最大化のために次は何をすべきだと考えていますか。」

    戦略も重要ですが、どれだけ熱量を持った人を集められるかが重要だと考えています。ベンチャー企業がプライム市場に上場するまでの10年のスパンで考えた時に、最初にいる人の熱量が一番高いと思っています。それが徐々に薄まっていくことで大企業病が発生する。我々はそこに一番気を付けなければいけないと思います。アンビスがこれだけ成長できているのは今の幹部職員が高い熱量を持って引っ張っているからです。2倍のサイズになるならば、熱量を持った社員も2倍必要です。最後は結局「人」ですから、それだけの熱量を持った人をどうやって集めていくかがこれからの課題です。この業界は人が集まりにくいので、優秀な方をしっかり採用していくということが、アンビスが抱える次のチャレンジだと思っています。

    株式会社アンビスホールディングス
    取締役CFO 中川 徹哉 氏
    2011年11月 在学中に公認会計士試験合格 2012年3月 東京大学法学部卒業 2012年4月 あらた監査法人(現:PwCあらた有限責任監査法人)入所 2014年7月 プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社)入社 2015年4月 モルガン・スタンレー・ビジネス・グループ株式会社入社 2018年8月 Morgan Stanley ニューヨーク本社出向 2020年3月 株式会社アンビスホールディングス入社。同社執行役員CFO就任 2020年7月 株式会社明日の医療取締役就任 2020年12月 株式会社アンビスホールディングス取締役CFO就任