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シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社/プリンシパル 高槻 大輔 氏

Win-Winの仕組みで社会を支えるCVC 投資家から見た成功するCFOの要件

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シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
プリンシパル 高槻 大輔 氏
世界最大級のプライベート・エクイティ投資会社であるカーライル・グループおよびCVCにおいて、20年以上に渡って12社・企業価値で1超円を超える投資を実行、投資先経営支援に従事。財務省国際局(出向)、海外経済協力基金にて発展途上国向け援助にも携わった。

認定NPO法人 発達わんぱく会理事、一般社団法人 ソーシャル・インベストメント・パートナーズ代表理事、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム理事、株式会社ファイントゥデイ取締役監査等委員、株式会社トライグループ代表取締役社長など、15以上の組織で理事・取締役等を歴任。

東京大学法学部卒、米スタンフォード大学経営学修士(Certificate in Social Entrepreneurship)、米日財団Scott M. Johnson Fellow。
※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚 寿昭
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    「世の中の役に立ちたい」という思いで海外経済協力基金に就職

    「大学卒業後、海外経済協力基金(現在の国際協力機構/JICA)に入社されています。なぜ海外経済協力基金を選んだのでしょうか。また業務内容を教えてください。」

    海外経済協力基金は、簡単にいうと日本版の世界銀行です。発展途上国向けに大型の資金援助をして、社会開発に役立てることが業務内容です。例えば、ベトナム版の日本坂トンネルを作る、カンボジア版の横浜港を作るといったプロジェクトに対して、長期に渡って資金援助を中心とした支援をすることが仕事です。現在は、さまざまな再編を経て、国際協力機構(JICA)になっています。
    海外経済協力基金を選んだ理由は、「世の中の役に立ちたい」という思いがあったからです。その一方で、単発で関わるような仕事ではなく、関わったことが未来につながるような仕事にしたいと考えていました。具体的には、長期にわたって支援が継続する資金開発援助が、その国の未来に貢献できるのではないかと思っていたのです。

    「どんな仕事をなさったのでしょうか。」

    1年目は、ちょうど日本輸出入銀行と統合して国際協力銀行ができるタイミングだったので、その準備でクタクタになるまで働いていました。会議の議事録を真っ赤に修正してもらったり、午前2時にコピー機を修理したりしながら「サラリーマンとはこういうことなんだな」と感じたことを今でも思い出します。2年目からは、ベトナムやカンボジア向けの資金援助を担当しました。例えば、港を作る時に開発資金を提供するといった仕事にあたりました。

    また、海外経済協力基金は総合職社員全員に留学の機会を与える組織でした。外国語が話せなければ仕事になりませんし、仕事でコミュニケーションを取る相手も修士や博士ばかりという世界なので、現地で学ぶことが必要だったのです。留学した際には、国際関係論や経済学、語学を学ぶ方が多かったのですが、私はビジネススクールでビジネスを学びたいと考えました。当時の私は、港湾セクターを担当していました。そこでは、援助の世界では珍しく、海外との取引を通して外貨が直接入ってくる仕組みで、ビジネスのパワーの大きさを実感していたのです。援助は大海の一滴です。ビジネス全体がわからないと国の発展にも寄与できないのではないかと考えて、ビジネススクールでの学びを希望しました。そして、ラッキーなことにスタンフォード大学のビジネススクールから合格通知を貰うことができたのです。

    スタンフォード大学で2年間学ぶ間、ベトナムの世界銀行事務所でのインターンなども経験しました。しかし、卒業時に辞令がくだり財務省への出向が言い渡されました。海外経済協力基金や財務省での仕事はスケールも大きく、とてもやりがいがあったのですが、日本を活性化する仕事に直接的に関わりたい、また自分の人生は主体的に選びたい、と考えて、転職することに決めました。

    日本での可能性を感じたPEファンドへの転職

    「なぜPEファンドに転職されたのでしょうか。」

    私は、日本は発展した素晴らしい国なので、海外の途上国に貢献することができればやりがいを感じられるだろうと考えて、海外経済協力基金に就職しました。しかし、留学中は、ジャパンパッシング時代ということもあり、「日本は沈む国だよね」と思われていることに気が付きます。そこで、日本人としての闘志に火がつきました。
    また、大学時代の私はPEファンドという仕事を知りませんでした。留学先の同級生にPEファンドで働いている方がいて、その存在を知ったのです。日本には、潜在的な力を出しきれていない大企業やファミリー企業が多い。だからこそ、このPEファンドは日本に向いている仕組みなのではないかと考えて、勤めてみようと考えたのです。

    CVCファンドの特徴

    「世界的に大手の外資系投資ファンドにご勤務の後、現職のCVCアジア・パシフィック・ジャパン株式会社で、8年目を迎えていらっしゃいます。こちらはどのような特徴をお持ちの会社でしょうか。」

    CVCアジア・パシフィック・ジャパン株式会社は、シティバンクが所属していた総合金融グループであるシティコープの自己資金投資部門がMBOをしてできたPEファンドで、40年程の歴史があります。「CVC」とは「シティ・ベンチャー・キャピタル」の頭文字でした。
    当社にはいくつかの特徴があり、1つ目はヨーロッパのチームが最初にMBOをして、次にアメリカ、最後にアジアという経緯で今のCVCになったので、ヨーロッパが本拠地でカバー力が強いという点です。多くのグローバルファンドはアメリカが本拠地です。
    2つ目は、チームでMBOしたことから始まっているので、絶対的な創業者はおらず、最初からチーム運営だったという特徴もあります。多くのグローバルファンドには創業者がいます。

    3つ目は、ヨーロッパならではの価値観ですが、「グローバル」といえどもローカルな意識が強いという特徴があります。ヨーロッパの人たちは、フランス人はフランス人、イギリス人はイギリス人、ドイツ人はドイツ人という意識があります。ヨーロピアンスタンダードという発想よりは、フレンチスタンダード、ブリテンスダンダード、ジャーマンスタンダードというようにそれぞれが異なるので、すごくローカルを尊重する価値観なのです。
    他には、シティベンチャーキャピタルで、最初の段階ではベンチャーキャピタルをしていたので、リストラなどではなく、成長企業が好きですね。

    CVCの投資基準

    「御社の投資基準について教えてください。」

    CVCには、トリプルB(Building Better Businesses) というモットーがあります。それは、いい会社に投資し、さらに良くしていくということです。「安いから買おう」、あるいは「大リストラをしてリターンを出そう」といった発想ではなく、良い会社がどうしたらさらに良くできるかという観点で投資をしています。株式会社ファイントゥデイさんや株式会社トライグループさんなど、投資先からもご理解いただけるのではないかと思います。

    「平均すると保有期間はどれくらいになりますか。」

    3から5年くらいが基本ですが、長いときは7年を超えるケースもあります。例えば、CVCの代表的な投資先の一つであるフォーミュラ1(F1)の株式は10年以上保有していました。

    「出口戦略として、どうお考えになっていますか。売却や IPOなど、どういったケースが多いのでしょうか。」

    あまり決まっていませんが、IPOするケースは多いです。その理由として、元がベンチャーキャピタルでグロースが好きという側面もあると思います。また、アジア各国は成長を遂げているので、成長企業も増えていきます。その結果、上場してイグジットしていくケースは多くなります。
    そして、ヨーロッパ起源のDNAとして、パートナーシップ投資が非常に多いという点も特徴でしょう。ヨーロッパは、ルイ・ヴィトン社などのようにファミリー企業が多く、同様にアジアもファミリー企業が多いです。その場合、CVCが単独で買収するのではなく、創業家が残るパターンが少なくありません。また、イグジットも丸ごとどこかに売却するのではなく、CVCが担っていた部分だけがなくなるというケースも多くなります。

    シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
    プリンシパル 高槻 大輔 氏
    世界最大級のプライベート・エクイティ投資会社であるカーライル・グループおよびCVCにおいて、20年以上に渡って12社・企業価値で1超円を超える投資を実行、投資先経営支援に従事。財務省国際局(出向)、海外経済協力基金にて発展途上国向け援助にも携わった。 認定NPO法人 発達わんぱく会理事、一般社団法人 ソーシャル・インベストメント・パートナーズ代表理事、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム理事、株式会社ファイントゥデイ取締役監査等委員、株式会社トライグループ代表取締役社長など、15以上の組織で理事・取締役等を歴任。 東京大学法学部卒、米スタンフォード大学経営学修士(Certificate in Social Entrepreneurship)、米日財団Scott M. Johnson Fellow。