博士号の取得
「医学博士号も取得されていますよね。どういう経緯だったのでしょうか。」
その頃、ロボケアセンターの代表取締役になりました。HAL®を活用した自費リハビリを提供する会社で、今でいう保険外リハビリの先駆けのような存在だったと思います。
ただ、あえて医療という形ではなく、障がいのある方や足腰の弱い方向けの「フィットネス」という位置づけでスタートしたんです。治療ではなく、あくまで運動支援。だから当時は特別な資格がなくても提供できました。社員も最初は私一人しかいなかったので、社長兼トレーナーとして、自分自身が利用者さんに運動を提供していました。
HAL®は本当にすごくて、すぐに効果が出るんです。利用者さんからもご家族からも、「こんなに良くなった」と本当に喜んでいただけました。振り返ると、武富士時代にお金を回収しに行けば、「鬼だ」「悪魔だ」と言われる。会計や管理の仕事でも、コスト削減やリストラなど、人から感謝される仕事ばかりではありませんでした。
だからこそ、「もっと直接、人の役に立つことはできないか」と考えるようになりました。そこで、通信で学べる放送大学の大学院に入り、医療系のゼミで学び始めました。HAL®を用いた重度脳卒中患者さんの改善について研究し、修士号を取得しています。ただ、仕事が本当に忙しくて、本来2年で終える課程を留年と休学を挟みながら、結局5年かけて修了しました。
その後、自分自身がぎっくり腰になったんです。社長に相談したところ、「筑波大学で診てもらったらどうか」と紹介していただき、当時の整形外科の山崎教授に診ていただきました。ちょうどその頃、介護士さんなど、重いものを持つ方向けの“腰タイプのHAL®”が開発され始めていました。
私は、「HAL®を装着して痛みが軽減できれば、運動もできるのではないか」と考え、その話を山崎教授にしたんです。すると教授から、「筑波大学で博士を取ってみたらどうですか」と言われました。「単関節については多くの研究があるけれど、腰についてはまだ研究が少ない。だから研究テーマとして非常に面白い」と。そこから、筑波大学整形外科で博士課程に挑戦することになりました。
今振り返っても、普通はぎっくり腰で大学病院に行くことなんてないですよね(笑)。社長とのご縁にも感謝していますし、山崎教授との出会いにも本当に感謝しています。
医学博士課程は4年間で、最初の1〜2年は授業、後半は研究中心になります。入試面接では「会計士なのに、なぜ医学なのですか?」と何度も聞かれました。なんとか合格はできたのですが、今回は通信ではなく、実際に大学へ通わなければならない。営業の仕事をしながら、お客様対応もあり、海外出張もある。正直、「今回も留年するだろうな」と思っていました。
ところが、途中でコロナ禍になり、授業がオンライン化されたんです。結果的に、それが大きかったですね。コロナ禍がなければ、4年で医学博士を取得することはできなかったと思います。

交通事故で手術、HAL®の利用者側へ
「そんな時に、交通事故に遭われたのですよね。」
2022年1月8日に交通事故に遭いました。信号待ちをしていたところ、後ろから追突されてしまい、車は全損でした。ブレーキ音も聞こえなかったので、ほぼノーブレーキだったと思います。
その事故で首を大きく痛めました。もともと「後縦靱帯骨化症」という、背骨の中にある後縦靱帯が骨のように硬くなり、脊髄を圧迫してしまう病気があったようなのですが、事故の衝撃で症状が悪化してしまったんです。手足のしびれも強くなっていき、最終的には、骨を削って人工骨に置き換え、チタンで固定する手術を受けました。かなり難しい手術だったようで、筑波大学病院に約1か月入院しました。
筑波大学にはHAL®が導入されていたので、リハビリではHAL®を使用しました。自社の製品に自分自身が救われるというのは、不思議な運命を感じましたね。
入院先も、博士課程でお世話になっていた筑波大学整形外科でした。入院中は、逆にまとまった時間が取れました。少し動けるようになってから、一気に論文を書き上げました。不幸な事故ではありましたが、「その状況をどう活かすか」という考え方は、昔から変わらないのかもしれません。
CEOとの関係性の構築
「大学教授でもあるCEO・山海さんとの関係性について教えてください。どのように信頼関係を築いてきたのでしょうか。」
まず、シンプルに社長の人柄が好きなんです。それに加えて、会社が目指している方向性にも強く共感しています。
CYBERDYNEは、単なる利益追求だけではなく、「技術を守る」「人を支援する」という想いから作られた会社です。だからこそ、複数議決権株式のような仕組みにもつながっているわけです。もちろん、意見を言うべき時は言います。ただ、最終的には「社長の目指す方向にベクトルを合わせよう」という意識で仕事をしているので、大きく衝突することは少ないのだと思います。
自分のプロフェッショナル意識だけを強く持ちすぎると、意見がぶつかった時に、「辞める」という選択肢しか残らなくなってしまう。でも、人間同士なので、意見の違いがあるのは当然。その中で、私は製品にも強い愛着がありますし、「どうすれば会社全体として前に進めるか」を考えながら、バランスを取るようにしています。
営業職は、比較的ストレートに感情を出すタイプの人も多いと思います。ただ、私は管理部門も経験していて、経営や財務、人事など幅広く見てきたからこそ、一歩引いた視点で話ができるのかもしれません。
「これまで、挫折やキャリアチェンジの不安、事故など、本当に大変なことも多かったと思いますが、どのように立ち直ってこられたのでしょうか。」
社長からは、よく「チキンだな」って言われるんですよ(笑)。本当に気も小さいですし、メンタルも強いタイプではありません。すぐ落ち込みます。スタッフもみんな知っているので、私には優しい。でも、不思議と復活も早いんです。家庭では妻がずっと支えてくれていますし、社長もすごく愛情深い方です。結局、私は「信頼できる人に支えられてここまで来たんだな」と思います。
それから、バリューアップパートナーさんが定期的に開催していたCFOの交流会にもよく参加していました。そこで、いろいろな会社の人の話を聞くと、「しんどいのは自分だけじゃないんだな」と思えるんですよね。もちろん、本当に辛い時は、そういう場に行く気力すらありません。でも、少し元気が戻って外に出ると、面白い人と出会えたり、一緒に飲みに行って未来の話をしたりして救われる。やはり、会社の外に相談できる相手がいることは大切だと思います。

