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ジャフコグループ株式会社/パートナー 小沼 晴義 氏

国内最大手VCのベンチャーキャピタリストがCFOに求める「忠実さ」と「客観的な判断」のバランス

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INDEX

    成功するCFOの共通点

    「これまで多くのCFOを見てきて、上場し上場後も成長しているCFOに共通するハードスキルやソフトスキルを教えてください。」

    先ほどの話と重複しますが、経理・財務・HRについて、ひととおり経験と知識を持っていることですね。
    その上で、経営者とお互いに信頼関係を築きながら、うまくコミュニケーションをとっていけることも重要です。これは、明るさやコミュニケーション能力が高ければ良いということではなく、先々のことを予見しながら、先回りしたコミュニケーションをとれることを意味します。先回りして経営者や取締役に伝えるなど、適切なタイミングで適切なコミュニケーションがとれること。予見するという意味では、もしかしたら慎重さや臆病さを持った方の方が良いかもしれません。

    「うまくリスク管理している人とも言えるかもしれませんね。」

    そうですね。リスクマネジメントができる方、問題が発生したときにすぐに適切な対応ができる方なのでしょうね。ここは重要なポイントです。
    また、社内にはさまざまな方がいるので、意見を聞く耳を持っている方であってほしいです。意見を拾い上げ、最善の策を考えていくことも大切です。

    「一方で活躍できないCFOは、その逆の資質の方でしょうか。」

    CFOは、会社もそれなりに整った上場の3年前くらいに入社されるケースが多いので、活躍できない人は、ほぼいないように思います。ただ、やはり能力が高い人でないと、つとまらない仕事ですよね。

    経営者とCFOの関係性

    「CFOとしてCEOとの信頼関係構築は大切だと思います。CFOはCEOとどのような距離感や接し方がよいと思いますか。」

    経営者とCFOの関係がうまくいっている会社は、経営者がCFOの意見について、聞く耳を持っていることが前提になると思います。そして、それができるのは、経営者がCFOに対して、「かなわない」「この人がいなくなると困る」といった思いを持ち、信頼しているからではないでしょうか。つまり、CFOは、能力面で必要とされ、信頼関係を築くことが求められます。その上で、何か問題が起こった時や、経営者が仮に間違った経営判断をするようなことがあれば、「社長、それはまずいですよ」と諌められること。嫌われないよう意見を言って、軌道修正できることが重要です。経営者と喧嘩をしてしまったり、経営者の悪口を言い回ったりする人もおられるようですが、自分で選んだ道のはずなので文句は聞きたくないですよね。
    そういう意味で、忠実に行動する面と客観的に物事を判断して行動する面とのバランスが大切だと思います。

    CFOの報酬とストックオプション

    「ここ数年でベンチャーのCFOの報酬があがり、平均値が800〜1200万円くらいから、1000〜1500万円になりました。加えて、ストックオプションもモチベーションを高めていく上では大切ですが、ベンチャーキャピタルは報酬やストックオプションについてどのようにお考えでしょうか。」

    報酬については、現在の1000〜1500万円の基準くらいなのかなと思います。
    ストックオプションについても、あった方が良いでしょう。ただ、創業当初からいるCFOと上場の2〜3年前に入社したCFOとでは、持分は変わって当然です。後者は、報酬も悪くないでしょうし、創業時に比べてリスクも低い状態で入社していますから。その方に多くのストックオプションを付与するというのは、制度の設計上難しいかもしれません。一般的なスタートアップでは役員と社員全体で10%ぐらいが上限となります。

    「15%は多いですか?」

    最近そういう会社もあると思いますが、15%ですと比較的多いイメージはあります。

    「10年程前から、特に外資系の投資銀行出身者がベンチャー企業のCFOになるケースが増えてきました。投資銀行出身者をベンチャーCFOとして招く選択に対してどうお考えでしょうか。」

    海外を含めて、上場前、上場後に複数回にわたって、大きな資金調達を予定している会社であれば、投資銀行出身の方がフィットすると思います。そこまで調達をしないのであれば、投資銀行出身の方でなくても良いでしょう。

    印象に残っているCFO

    「これまでに出会ったCFOの中で、特に印象に残っている方がいたらお聞かせください。」

    最初にお話ししました、SaaS・FintechのスタートアップのCFOの方は印象に残っています。この方は先程お話のありました外資系投資銀行出身者で、社員が数十名の頃にジョインされました。前職では上場企業の資金調達からM&Aなど広範囲に渡ってご経験された方で、入社後は資金調達から管理部門の体制づくり、上場準備、また部門を越えて積極的に活動される等、キーパーソンとして活躍されてました。上場後も現在まで新規事業やM&A、資金調達と多方面で活躍されておられます。

    また、先ほど少しお話しした、SaaS事業を展開されている企業のCFOの方も印象に残っています。ジョインされたのが上場の約2年前ですが、その翌年の予算策定が素晴らしかったのです。その年に初めてピタッと予実が合いました。蓋然性のある、精度の高い予算を作られる方だと感じました。もちろん、資金調達や証券会社との交渉など、上場準備においても大きく貢献されていました。

    ベンチャーCFOの魅力

    「ベンチャー企業のCFOの魅力はどんなことでしょうか。」

    当事者として、成長企業を支える役回りですから、醍醐味があると思います。バックオフィス全般に言えることだと思いますが、成長するために必要なお金という大きな経営資源を獲得してくる役割には大きな魅力があると思います。そして、会社の打ち手が成功して、売り上げがゼロから数百億に成長したとしたら達成感は相当なものと思います。
    ただ、一方で非常に大変な仕事だとも思います。

    「日本において、新しい産業の創造や技術革新は急務です。こうした状況において、ベンチャーキャピタルの役割は一層大きくなってますが、小沼様の今後の抱負をお聞かせください。」

    2018年から、若手キャピタリストの育成担当をしています。キャピタリスト1人1人が着実に力をつけていき、仕事を任せられる人を増やしたいと思っています。また主力となるキャピタリストを、3年以内に10人、10年後には20人に増やしていくことができれば、強いベンチャーキャピタルになると思っています。1人1人の担当者が強くなっていかなければ、競合ベンチャーキャピタルには勝てません。
    その上で、スタートアップや新しく挑戦する起業家を、どれだけ私たちがサポートできるか。成功事例をたくさん作っていきたいです。名実ともに、圧倒的にナンバー1のベンチャーキャピタルとなっていきたいと考えています。

    ジャフコグループ株式会社
    パートナー 小沼 晴義 氏
    1992年4月のジャフコ入社から現在までスタートアップへの投資活動を行っている。 2022年4月チーフキャピタリストに就任。 2024年4月よりパートナー。 主な投資領域はFintech、SaaS、Market place、Robotics、Age Tech。 主な投資実績は、バリューコマース、マネーフォワード、Chatwork、Finatextホールディングス等。 関わった投資先のIPOは22社、M&Aは13社。 Forbes Japanが選ぶ日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10 2017年10位 2019年3位 2022年 4位。