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ジャフコグループ株式会社/パートナー 小沼 晴義 氏

国内最大手VCのベンチャーキャピタリストがCFOに求める「忠実さ」と「客観的な判断」のバランス

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ジャフコグループ株式会社
パートナー 小沼 晴義 氏
1992年4月のジャフコ入社から現在までスタートアップへの投資活動を行っている。
2022年4月チーフキャピタリストに就任。
2024年4月よりパートナー。
主な投資領域はFintech、SaaS、Market place、Robotics、Age Tech。
主な投資実績は、バリューコマース、マネーフォワード、Chatwork、Finatextホールディングス等。
関わった投資先のIPOは22社、M&Aは13社。
Forbes Japanが選ぶ日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10 2017年10位 2019年3位 2022年 4位。
INDEX

    企業紹介の冊子で知ったベンチャーキャピタルという仕事

    「大学卒業後、なぜベンチャーキャピタルであるジャフコに入社されたのでしょうか。」

    当時はインターネットがない時代でしたので、大学3年生の時にリクルートから送られてくる業種別の企業紹介の冊子を見て、就職先を探していました。そこでベンチャーキャピタルのページが目に留まったことがきっかけです。ジャフコ以外にも日本アジア投資や日本エンタープライズ・ディベロップメント(NED)、日本インベストメント・ファイナンスなど4〜5社が掲載されていたと記憶しています。

    私はその時に初めてベンチャーキャピタルという仕事を知りました。リスクをとって、ベンチャー企業や中小企業に投資し、成長支援をして、株式上場までお手伝いをする。そして、成果に応じてキャピタルゲインを得るという仕事に魅力を感じて、ベンチャーキャピタル業界を第一志望として就職活動を開始しました。例えば、投資をした1億円が上場して評価額が100億円になれば粗利は99億円という世界です。他にはなかなかない面白いビジネスだと思いました。

    ベンチャーキャピタルの仕事とジャフコの特徴

    「誰もが知るジャフコですが、改めて事業内容と特徴についてお話しください。」

    ベンチャーキャピタルの仕事は、機関投資家を含めた出資者からお金をお預かりして、ファンドを設立するところから始まります。それから有望な起業家への接触を行い成長性のあるスタートアップへ出資をします。出資後は、成長に必要な人材の採用、販路拡大のためのマーケティング活動などを含めて様々な形で経営をサポートしていきます。企業の売上と利益が上がり、株式上場やM&AなどでExitができれば、ようやく保有している株式が流動化しますので、売却して現金化し、ファンドに戻して、ファンドの出資者に分配します。これが一連のサイクルです。

    ジャフコは、昨年(2023年)ちょうど50周年を迎え、今年で51年目になります。現存する企業では日本最古で最大級のベンチャーキャピタルです。累計の投資先上場会社数が約1000社超、累計のファンド運用額が1兆円を超えており、これだけの実績があるベンチャーキャピタルは世界的に見ても少ないと思います。
    日本を中心に、アメリカ・アジアで多様な業種のスタートアップに投資をしています。日本国内では、ベンチャーキャピタル事業とバイアウト事業を実施しています。アメリカではIcon Ventures、アジアではJAFCO Asiaという社名で、ベンチャーキャピタル事業を行っています。

    豊富な資金をもとに、スタートアップの資金調達に併せて、大型の出資も提供できます。
    また、新卒採用、キャリア採用を行い、豊富な人員が揃っていることも特徴の一つです。ベンチャーキャピタル部門に約40名、投資先のスタートアップの支援をするビジネスディベロップメント部門に約20名、全てフルタイムのメンバーなので、手厚く投資先の成長支援を行うことが可能です。

    「現在、上場しているベンチャーキャピタルは何社あるのでしょうか?」

    当社に加えて、日本アジア投資さん、フューチャーベンチャーキャピタルさんですね。ベンチャーキャピタルは、出資者と株主という2つのステークホルダーがいる特性上、上場する難しさがあります。株主の方にとっては、株価や配当を上げる意味でROE(自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)が重要です。一方で、この事業は景気が悪い時にも投資を継続することが重要で、そのためには潤沢な資金をあらかじめ持っておく必要もあります。資金を確保しつつも、ROEを上げるために、自己資本を含めて余計な資産を持たないという経営をしなくてはならないのです。
    そうはいっても、エクイティファイナンスができるという上場のメリットは大きいです。当社も昨年、CBで150億円の資金調達をしました。

    ベンチャーキャピタリストの魅力と輝かしい実績

    「ベンチャーキャピタルリストとして32年のキャリアがありますが、その魅力ややりがい、そして大変さを教えてください。」

    自らが主人公として、事業を立ち上げる起業家とは立場が違いますが、出資を通じてスタートアップの成長に関わることができる、役に立つことができる、ということにはやりがいがあります。新しい産業を創出し、経済を良くしていくことの社会性は大きいです。今後の日本経済においても、重要な役回りだと思います。
    また、大変な仕事ですが、長く続けていくことによって、自分としても成果を上げられるビジネスです。

    ただ、難しいのは、失敗がつきもので、投資先の半分くらいはうまくいかないということです。落ち込みながらもチャレンジし続ける気持ちが重要です。常に投資候補先の経営者とコミュニケーションとりながら、新しい投資をして、成長支援することを繰り返しています。

    「輝かしい実績を作ってこられましたが、これまでのIPOやM&Aの数を教えてください。」

    IPOは途中から関わった会社も含めると22社で、M&Aは13社の合計35社です。持分譲渡は除いています。

    「Forbes Japanの「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」に3回選出、「Japan Venture Awards」でベンチャーキャピタリスト奨励賞も受賞されています。それぞれどのような賞なのでしょうか。」

    Forbes Japanの「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」は、Forbes Japanという月刊誌が、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の協力のもと、会員企業にアンケート調査を行い、その回答から作成した10位までのランキングです。1年間のIPOとM&Aなどによって得たキャピタルゲインを対象としてランクキングを作成しており、2023年版は4位に選んでいただきました。私としては、投資先の経営者が素晴らしかったに過ぎないと考えています。

    「Japan Venture Awards」のベンチャーキャピタリスト奨励賞は、中小機構がバックアップして1年に1回開催されているベンチャーアワードです。スタートアップの経営者の表彰がメインですが、何年か前からベンチャーキャピタリスト年間2〜3人が選ばれも表彰されているようです。こちらもたまたまご縁があって、2020年に選出していただきました。

    投資の際に重視する「経営者と事業内容のマッチング」

    「小沼様の投資の判断基準を教えてください。」

    ひとことで言うのは難しいのですが、経営者の経営手腕を見ているという感覚でしょうか。
    その方らしい事業であることや、ビジョンが明確であること、そして、どう経営されているかなどを確認します。また、一人では経営はできませんので、幹部社員の採用をはじめとして、人の集め方・巻き込み方も重視しています。

    「経営者と事業内容のマッチングも大切なのですね。」

    そうですね。経営者と事業性の組み合わせ、市場機会をとらえるタイミングなどが、うまく噛み合っていると良いですね。例えば、私が全く経験したことがない建築の設計を事業とすることは、ミスマッチだと思うのです。その方にふさわしい、その方なりの事業をされていることが大切です。

    サービスや商品が市場に適合している状態を示す、プロダクトマーケットフィット(PMF)という言葉があり、我々は、よく起業家に「それはPMFの状態ですか?」と質問します。
    同じように、起業家がその市場に合っているか、「ファウンダー・マーケット・フィット」とも言えるような状態が大切だと思います。
    また市場性も重要で、これから成長していく市場と成長が止まった市場とでは、やはり大きな違いがありますよね。

    ジャフコグループ株式会社
    パートナー 小沼 晴義 氏
    1992年4月のジャフコ入社から現在までスタートアップへの投資活動を行っている。 2022年4月チーフキャピタリストに就任。 2024年4月よりパートナー。 主な投資領域はFintech、SaaS、Market place、Robotics、Age Tech。 主な投資実績は、バリューコマース、マネーフォワード、Chatwork、Finatextホールディングス等。 関わった投資先のIPOは22社、M&Aは13社。 Forbes Japanが選ぶ日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10 2017年10位 2019年3位 2022年 4位。