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CFOインタビュー
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tripla株式会社/取締役CFO 岡 義人 氏

先を予測し、挑戦し続けたすべての経験が現在のCFOの道を作った

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※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚寿昭
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    CFOに求められるスキル

    この2年強を振り返り、CFOに必要なスキルは何だと思いますか。

    一般論としては、財務、経理、法務、人事、総務、経営企画等を管掌するので、管理部全体を理解し、責任をもって判断するためのスキルが必要です。資金調達のフェーズで言えば特にファイナンスが重要ですし、Iの部作成であれば、経理や開示のスキルが求められように、場面場面で重要視されるものは異なって来ます。幅広いスキルセットは必要ですがそれ以上に、ベンチャーフェーズのCFOに一貫して求められるものは、やりきるパワーやハートだと私は思います。予測し得ないできことが起こり続ける中で(現職で言えばコロナ禍の旅行業関連であり、グロース市場全体の株価も大きく下がったりと、アンコントローラブルで大きな環境の変化が複数起こったタイミングでした。また、このようなマクロ的な変化以外にも社内レベルで日々様々なことが起こります。)、ベンチャー企業では一般的にリソースが限られているため、よりハードであることが多いです。

    そのような中、心が折れてしまったり、緊張の糸が切れてしまったりすると、自分の業務のクオリティが落ちてしまうことはもちろん、周囲はついて来ないでしょう。困難な状況の中で、誰よりもコミットし続けて、先頭を走る姿勢を見せ、やりきるということが、最も重要だと個人的には思います。
    また、入社時点からすべてのスキルセットを持っているような方は稀かと思いますので、入社した後でどれだけ上達して行けるかが重要になります。多くのITベンチャーの場合、複雑な会計論点はそこまで多くないので、経理や内部統制についてのみであれば、監査法人数年間で得られる知識で対応できると思います。その上で、監査法人の業務以外の部分にどれだけ興味をもってコミットし、やりきることができるかが圧倒的に重要ですね。

    「それくらいの覚悟がないと乗りきれなかったのですね。」

    特にIPO直前においては、先述のとおり短い期限の中で同時多発的に多くの業務が発生します。多くのベンチャーではリソースは限られているため、一人が感じる負担感は大きいと思います。限られたリソースの中で、労働環境をしっかり守り、健全な組織運営を維持するためには、役員が率先して動く必要がありました。

    これまでのご経験が全て現在の仕事に活きているのですね。

    そうですね。現職では、IPO準備、資金調達、組織構築、予算管理、リーガル対応等広範に対応しましたが、トーマツ、ソフトバンク、ベンチャーのそれぞれで積ませて頂いた経験を役立てることが出来たと思っています。
    過去在籍していた組織で任せて頂いた業務については、担当し始めたタイミングではまだ型が決まってなかったことが多かったのですが、試行錯誤しながら獣道を作るような感覚でした。型が決まっているものを前例に倣っていくよりも、試行錯誤の過程を経ることによって得られる経験の方が濃いように思います。古臭い考え方かもしれませんが(笑)その過程を経ることが出来たのは当時は大変でしたが、振り返って見れば運が良かったなと思います。これから先もチャレンジングであるとは思いますが、気概を持ってやって行きたいです。

    「CFOの役割は上場前と上場後で変わりましたか。」

    変わりましたね。上場前は、プレイヤーとしてIPO準備(各種審査対応、Iの部や成長可能性資料等の開示書類作成、Valuationやロックアップ等の証券会社や株主との交渉等)をしており、それが相当なウエイトを占めていました。IPO準備は上場した以上、当然ですがそれらはなくなりました。また、ある程度、体制も作れているので、任せられるようになり、ルーティーン業務についてはポジティブな意味で業務が減っているということもあります。
    上場後は、IR対応が増えて来ました。アフターコロナに移っていく中、ありがたいことに注目頂いているように感じておりますので、各対応を行っております。また、今後は海外にも事業拡大して行きたいと考えていますので(成長可能性資料で開示済)、関連業務が発生します。

    「これからは上場会社のCFOとして企業価値最大化のためにどのようなことをしていきたいと思いますか。 」

    抽象的な答えになってしまいますが、短期的には守りを固めながら、中長期的にしっかり企業価値を上げていきたいと思っています。また、当社の価値を正しく理解いただくことにも注力していきたいですね。

    CFOの魅力

    監査法人に勤務している人、CFOを目指している人にCFO職の魅力を伝えてください。

    CFOは、財務会計のプロフェッショナルになりたい方にはフィットしない可能性があります。ただ、ファイナンスも人事総務、法務等も含めて俯瞰して見ていきたい、責任感やオーナーシップもって管掌範囲を広げていきたいという人には魅力のある道の1つではないかと思います。また、IPOは本当に大変ですが、達成したときの喜びは言葉では表現しきれません。それくらいやりがいがあることだとも思います。監査法人にいる会計士の方は、監査、財務会計、内部統制等、狭く深く追求していきますよね。
    一度は監査法人の外の空気を吸ってみることも考えてよいかもしれません。監査法人視点と監査法人外の視点という多様な視点を持てることが強みになると思います。その上でまた、監査法人に戻るという道もありだと個人的には思います。

    岡さんのこれからの夢を聞かせてください。

    今回の上場は自分にとって大きな目標でしたので、それを形にすることができたことは本当に良かったです。
    体重がずいぶん増えてしまったのでまずはダイエットですね(笑)
    これからも常に成長してきたいと思っています。年齢はある程度重ねて来ましたが、まだまだ挑戦を続けたいと強く思っています。これからも成長曲線の傾きを高い状態で維持していきたいですね。

    tripla株式会社
    取締役CFO 岡 義人 氏
    広島県出身。 慶応義塾大学在学中に公認会計士試験に合格し、在学時よりトーマツで勤務。 その後、ソフトバンク株式会社にて経営企画業務に携わった後、スタートアップにて取締役CFOとして財務、管理全般を担当。 2020年5月のコロナ禍中に旅行業界に転身し、2022年11月に東証グロース市場に上場を果たす。