ベンチャーで経験した資金調達と組織作り
「約4年でソフトバンクを卒業して、管理部門がないに等しいベンチャー企業に飛び込まれていますが、その背景を教えてください。」
ソフトバンクの終盤は、4社6部署を兼務していました。
兼務していた子会社の1社に30歳前後の若者が立ち上げた自動運転のベンチャー企業がありました。
そこでは数値回りの業務のみでなく、法務や資金調達をメインとし、たまに現場のサポートをする等、広範囲に対応していました。
私としては今までとは異なるフィールドで仕事ができ、スキルの幅が増えていくことで成長を大いに感じることができました。
また、2016年~2017年は世界的にも自動運転にホットな視線が向けられていた時期で、ここが時代の先端だと感じながら、会社が成長していく様を見られることも嬉しかった。
ですから、自然な流れで、ベンチャーで働くことに興味が湧いて来ました。その中でも、ソフトバンクの後ろ盾がないところでリスクを取ってやりたいと思うようになりました。大企業グループですと、ヒトやカネの経営資源にとても恵まれています。
それはとても素晴らしいことではありますが、自分としては、甘えられないところで、今まで培って来たもので通用するのか腕試しをしたいという気持ちもありました。
「転職されたベンチャー企業ではどのような経験をされましたか。」
経営管理全体の責任者として入社しました。
最も大変だったことの1つは入社直後の組織作りです。私が入社した時の管理部門は、派遣社員の女性1人だけでした。リソースがまったくない中で、請求書発行、採用、備品購入、オフィス移転等々、担当として何でもやってました。派遣の方も辞めようとしていたので、合計7時間ほどかけて説得しなんとか引き止めました(結果としてそこから1年いてくださいました)。しばらくの間、なかなか人が定着しなかったのですが、半年ぐらい経ったときに、ようやく人が揃ってきた感覚がありました。
チームを作ることは大変でしたが、やりがいはありました。半年とはまったく思えないくらい長く感じましたし、日々ハードシングスの連続でしたが、この経験は現職での支えになりました。半年あればそれなりのチームを作れる可能性があると経験からわかったからです。期限が刻々と迫っていく中、周囲から無理だと言われてもやれる自信がありました。
さらに、入社からしばらくの間はビジネスチームも十分に揃っていたわけではなかったので、マーケティング関連の業務も含めて行っていました。当時は地方の顧客開拓のために、銀行がビジネスマッチングをしてくれていたのですが、多くの都道府県の銀行に出向いて説明をしたり、銀行が主催してくださったセミナーで会社サービスの説明をしたりしていました。銀行はVCからの紹介が多かったので、1番最初にコンタクトとるのは私でした。人手が不足していたので、誰かに渡すのではなく、そのまま一人で全国行脚して回りました。
管理チームがある程度作れてからは、私個人の業務としては、資金調達と予算管理の業務のウエイトが増えていきました。在籍期間中に合計18億円調達しています。数億円ご出資頂いた事業会社の方から、「岡さんがいなかったら当社は出資していません」とまで言って頂けたことは嬉しかったです。
事業会社の方たちはVCとは異なるロジックで動いています。大手事業会社の経営企画時代に多くの意思決定プロセスを見て来たことから、どうやって物事を決めていくかを俯瞰して理解していたので、自分がその会社にいるような感覚で、意思決定プロセスを把握して、個人の発言の意図や真意を深掘りしながら、先方の担当者といっしょにカウンター案を考えていき、結果につなげることができました。
「現職への転職にはどのような思いがあったのでしょうか。 」
資金調達の途中で降りるような無責任なことは当然許されないため、無心で最後までやりきりました。これも一大プロジェクトでしたので終わった後はかなりの達成感がありました。その後少しゆっくりしながら、やり残していた重要な制度設計を終え、一区切りついたタイミングで転職しました。IPOを達成し、上場企業の成長貢献・運営を行いたいと思っていました。
結果としては、そのとおりになりました。