IPO後に新設した事業戦略本部の役割
「マサーズ上場直後、事業戦略本部長に就任します。どのような業務を担当されていたのでしょうか。」
実は、このポジション自体も私が作りました。高原に「IPOをしたら退職しようと思っている」と話したら、引き止められました。そこで、この組織に残って自分が貢献するとしたら何が出来るだろうと考えた結果、経営・管理・現場をつなぐ存在として自分が立つと決めて、事業戦略本部を作ったのです。
IPOをするまでは、IPOという錦の御旗のもと、やりたいことを我慢している状態です。しかし、IPO後は、例えば経営は「M&Aをやりたい」、事業は「何か新しいことをやりたい」、管理は「ガバナンスを鍛えたい」というように、それぞれが違う道へとはっちゃけ出します。みんなが違うベクトルに進むと、この三者が離れ出して、組織がバラバラになっていきます。これを制御するために、真ん中で繋ぐ存在が必要だと思いました。
そこで、高原に「この役割でないと、私がこの会社にいる価値がないから、組織を作っていい?」と話して、了承を得たので「事業戦略本部」を作ったという経緯です。会話としては5〜10分の話だったと記憶しています。組織としては、広報・プロダクト開発・自分の持っていた経営企画(内部監査)で組成しました。
「自分がハブという形で組織をガッチリと作ったのですね。意識して社内に働きかけたことはありますか。具体的にはどんなことをされていたのでしょうか。」
これまでやってきたことと何も変わりません。IPOの時も、私は各部のKPIを把握していましたし、各事業部長陣ともコミュニケーションを取っていました。また当然のように代表2名とも管理部門とも密にコミュニケーションを取っていたので、結局やることは変わっていないです。上場後に役割を明示化したということですね。
IPO後のそれぞれの変化
「上場前と上場後でCEO、COOの言動に変化はありましたか。」
ずっと我慢してもらっていたので、「やっと攻められるね」という感じでした。高原としては、もっと伸ばしていくためにM&Aもやりたいし、投資にも力を入れたいと思っていたようです。
「IPOは御社にとってプラスだったのですね。」
そうですね。当社は、代表の2人は当時20代で、フリーランスエンジニアのリソース提供がメイン事業の会社です。一般的には「この会社、大丈夫?」と思われますよね。IPOをしているという与信があると、企業からもフリーランスエンジニアからも「この会社は上場しているから大丈夫だろう」と見られます。その信頼を勝ち得るためにIPOをしました。
「翌年、経営戦略本部長に就任します。どのような組織でどのような役割でしたか?」
上場前からコーポレートマネジメント本部(CM)があり、CFOが管掌をしていたのですが、CFOが退任し、高原から「部門を任せたい」と頼まれたので、引き受けました。このタイミングでCMが持っていた人事・労務・経理・財務・法務・総務が管掌下に入ってきました。
「組織が大きくなって気持ちは変わりましたか。」
上場企業の管理部門の責任者になり、ミスができなくなった、という緊張感を持って業務に向かっています。組織が大きくなって喜ぶというよりは、さらに自分が成長しないといけないという思いが強くなりました。
「さらに2年後、取締役CFOに就任します。取締役CFOは経営の監督者である取締役と執行役であるCFOという両面を兼ね備えているので何でもできてしまいます。そのため高度な倫理観を問われると思いますが注意していることがありましたらお話しください。」
取締役CFOになって、何でもできるようになったという感覚よりも、何にでも責任を負わなければいけないという気持ちの方が強いですね。あらゆる判断を慎重にすることを常に意識しています。表面の浮ついたところに流されると、短期ではよくても中長期的に見たときに、法的、倫理的にも誤ってしまうことも起きうるので、地に足をつけてしっかりと物事を考えて判断をする。より深く考えなくてはいけなくなったと思っています。

M&Aは非連続の成長を生み出す手段
「TWOSTONE&SonsはM&Aに積極的ですが、M&Aをどのように考えていますか。」
M&Aは基本的にロールアップ戦略(同業の企業を連続で買収し統合することで市場シェアを拡大する戦略)を考えています。
「当社を通じて稼働しているエンジニア数」をKPIとすると、右肩上がりにゆるやかに伸びていくものの、爆発的に伸びるということはありません。なぜなら、マッチングにおいて人が介在しなくてはならないからです。「どういった案件が良いですか?」「こういった案件がありますが、入りませんか?」「ご希望の案件で募集してみます」というように。
つまり、連続性の成長はあるけど非連続性の成長がない。そこで、非連続性の成長を生み出すためにM&Aを有効活用し一気に稼動数を増やそうとしているのです。
また現在、このエンジニアのエージェント業界には多数のプレイヤーがいますが、いずれは収束していくと予測しています。例えば、人材業界では、リクルート社、マイナビ社、パーソル社が中心にいて、もう勝てないですよね。我々の業界でもその流れが来た時に、企業からは「TWOSTONE&Sonsに出そう」、エンジニアからは「TWOSTONE&Sonsに登録しよう」と思ってもらうためには、成長を急ぐ必要があります。これには既存事業の成長だけではなく、M&Aによる非連続的な成長が必要です。
マーケットの成長に沿って成長するのではなくて、マーケットが収束される時にセンターにいることで圧倒的な存在になれると考えています。
「ブランディングということですね。」
広告費をさほどかけなくても人が来る、いい人が来るからいい案件が来る、いい案件があるからいい人が来る、という好循環を作ろうとしています。
「M&Aは、成功もあれば失敗もあると思うのですが、どのように見極めていますか?」
企業とエンジニアをつないでいるというシンプルなビジネスモデルであること、さらに、同業で事業の内容がわかっているため、失敗は起こりにくいです。
私を含めた経営陣はもっとM&Aを加速させていきたいと考えています。
海外からの増資の理由
「その場合、資金の問題が出てきますよね。海外から資金調達(増資)もされていますが、その理由をお聞かせください。」
増資が必要な理由としては、M&Aを続けていく中で、純資産とのれんの比率がほぼ同じになってしまったので、金融機関からの与信の観点で、解消する必要があると判断しました。その際、今の株主構成は、国内の個人株主が多いのですが、今後成長していくにあたって、海外の機関投資家にも知ってもらいたいという思いで海外から資金調達をしました。
IRとPRは並行して進める
「資本政策やIRについてのTWOSTONE&Sonsの考えをお聞かせください。」
IRをどんなに頑張っても会社が知られていなければ株を買おうと思わないので、PRも並行して進めて、どういう会社か知っておいてもらわなくてはいけないと考えています。
消費者が商品やサービスを認知してから、購入、共有するまでの購買行動プロセスにAISAS(Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有)の頭文字)があります。関心を持ったら検索をすると言われていますが、調べるのが面倒なので一定数の方には離脱されてしまいます。
上場していると「知ってくれているはず」という気持ちになってしまいがちですが、それは間違いで、誰も知らないという前提に立っていた方が良い。PRを通して、応援してもらったり、「この会社の商品・サービスならば買いたいな」と思ってもらえたりできるとよいですね。そういうポジショニングを作って行けるように意識して動いています。
私は、IRが守りで、PRが攻めというイメージを持っています。「IRのために、このタイミングでPRを出そう」「IRでいいネタがあるからPRを早めに出そう」といったことを考えながら、並行して進めています。
