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シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社/プリンシパル 高槻 大輔 氏

Win-Winの仕組みで社会を支えるCVC 投資家から見た成功するCFOの要件

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※インタビュアー/バリューアップパートナー株式会社 代表取締役 大塚 寿昭
INDEX

    投資前から関与するCVCのバリュークリエーション

    「投資先に対して、どのタイミングでどのように関わっているのでしょうか。」

    私は、CVCのオペレーション・チーム、すなわち投資後の企業価値を向上させるチームにいます。バリュー・クリエーションのやり方は、ファンドごとに異なりますが、CVCではパートナーシップ・アプローチと呼んでいます。主役はあくまで投資先の経営陣ですが、ガバナンスを提供するというパッシブな関与ではなく、経営陣の横に座ってパートナーとして困りごとを解決していくような、比較的アクティブな関わり方をしています。

    また、オペレーション・チームは、投資が決まってから受け継ぐのではなく、最初から、案件を見つけて投資をするディール・チームと共にビジネスを見極めていく特徴があります。経営体制の支援、投資後の事業計画を含むプランを作り、投資委員会に進めるプロセスもディール・チームと一緒に行っていくのです。

    「投資前から、経営陣を変更することも視野に入れているのでしょうか。」

    パートナーシップ・アプローチでは、既存の経営陣との協働が前提となります。一方で、投資前から全てのシナリオを考えるのも我々の仕事です。PEのバイアウトは、会社全体を買収し、一旦買収したら流動性なく3〜7年保有し続けることになる複雑な仕事です。「こうなったらいいな」という基本のシナリオを持ちつつ、「こうなったら、次はこの手を打とう」というように、さまざまなシナリオを考えてからスタートします。

    バイアウトファンドの魅力

    「22年間、世界的大手の外資系投資ファンドに在籍してきましたが、これまでどのような会社に投資してきましたか。」

    12社で、内訳としては大企業系とファミリー企業系とが半々くらいだと思います。大企業からのカーブアウトでは、資生堂さんからカーブアウトした株式会社ファイントゥデイさんなどがあります。ファミリー企業系ですと、株式会社トライグループさんへ現在投資をしています。

    「バイアウト・ファンドの仕事の魅力を教えてください。」

    「Win-Win」になるか「Lose-Lose」になるかのどちらかで、「Win-Lose」のようなトレードオフ関係はあまりないということだと思います。うまくいく時は、経営陣・従業員・取引先も、投資家も、我々も、全員がハッピーになる。この人を叩いたら、自分が勝てるということはなく、「共に勝っていこう」という発想なのでやりがいがありますね。難易度が高いWin-Winにまで持っていくためには、「みんなで頑張っていく」という連帯感が不可欠。その点に魅力があるように思います。

    CEOを選ぶ基準

    「CEOを選ぶときの基準はありますか。」

    ケースバイケースだとは思いますが、CEOは会社を守り育てなければいけない最終責任者なので、「結果を出せる人」というのは間違いありません。

    「実績がある人でしょうか。」

    実績も必要だとは思いますが、必要十分条件ではありません。ラッキーで実績が出るパターンもあれば、その方がいたことで本来は出ない実績が出せたというパターンもあると思いますので、その因果関係はしっかり理解したいですね。
    この業界には、会社の状況がいいときに伸ばせるCEO(Good Time CEO)と、悪いときに救えるCEO(Bad Time CEO)がいて、両方できる人はそれほど多くないというコンセンサスがあります。前者も後者もどちらも良いCEOです。会社の状況に応じて、誰がリーダーであれば一番良く変わるかを考えて検討します。ただ、結果を出さなければ、従業員を含めて全員が負けてしまうので、結果を出せるということは非常に重要なポイントです。

    では、結果を出すためには何が必要か。まずはリーダーシップが極めて重要です。特に日本においては、比較的トップダウンではない組織であることが多いので、日本の特徴を理解した上で牽引でき、自分のチームを作れる方であることは重要だと思います。ちなみに、アメリカは、流動性が高くCEOが変わる場合も多いので、トップダウンが効きます。

    CFOを選ぶ基準

    「投資先のCFOで失敗した人がいたとしたら、なぜ機能しなかったのかその理由を教えてください。」

    そのCFOの方固有の理由で機能しなかったというケースはほとんどありません。CFOは極めて重要なポジションですので、CEOとのマッチアップ、CEOとCFOの特定の状況への向き不向きもあるでしょう。また、投資は生き物で、日々状況が変わります。例えば、リーマンショックが起きてグッドタイムからバッドタイムになってしまったとしたら、Good Time CFOの方は能力を発揮しづらいですよね。でも、そんな環境の中でもチームで乗り越えていかなくてはならないので、そうした対応力で差は出てくると思います。
    そうした意味では、個人の能力というよりは、そのCFOがいていいチームになり、チームとして変化に対応できたかどうかが肝なのだと思います。

    「このCFOは本当に入れてよかった という方のスキルやキャリアはありますか。」

    実質的なCEO経験があったりCEO目線を持っていたりするCFOの方は、極めてうまくいく“勝ちパターン”が多いと認識しています。それは、CEOのパートナーとして悩みを理解した上で、役割分担ができるからです。逆に、比較的狭いファンクションで、財務経理のスペシャリストとして上がってきた方は、CEO目線に到達する前にチャレンジが必要になってくる場合もあるように見受けられます。

    「成功しているCFOに共通しているスキルや人柄はありますか。」

    共通項を探っていくと、一般論になってしまって、単なるビジネスパーソンと変わらなくなってしまうと思います。人の話を理解でき、自分の話をわかりやすく伝えることができるコミュニケーション能力があるということ。ストレスにさらされてもひるむことなく、いい環境においても調子に乗らないこと。そして、数字を通じてビジネスをきちんと理解し、事業部と連携して、成果を積み上げられることですね。当たり前のことですが、その当たり前が難しいですよね。

    シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
    プリンシパル 高槻 大輔 氏
    世界最大級のプライベート・エクイティ投資会社であるカーライル・グループおよびCVCにおいて、20年以上に渡って12社・企業価値で1超円を超える投資を実行、投資先経営支援に従事。財務省国際局(出向)、海外経済協力基金にて発展途上国向け援助にも携わった。 認定NPO法人 発達わんぱく会理事、一般社団法人 ソーシャル・インベストメント・パートナーズ代表理事、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム理事、株式会社ファイントゥデイ取締役監査等委員、株式会社トライグループ代表取締役社長など、15以上の組織で理事・取締役等を歴任。 東京大学法学部卒、米スタンフォード大学経営学修士(Certificate in Social Entrepreneurship)、米日財団Scott M. Johnson Fellow。