COLUMNコラム

#ベンチャーキャピタル(VC)の記事一覧

#ベンチャーキャピタル(VC)
ジャフコグループ株式会社
パートナー 小沼 晴義 氏

国内最大手VCのベンチャーキャピタリストがCFOに求める「忠実さ」と「客観的な判断」のバランス

企業紹介の冊子で知ったベンチャーキャピタルという仕事 「大学卒業後、なぜベンチャーキャピタルであるジャフコに入社されたのでしょうか。」 当時はインターネットがない時代でしたので、大学3年生の時にリクルートから送られてくる業種別の企業紹介の冊子を見て、就職先を探していました。そこでベンチャーキャピタルのページが目に留まったことがきっかけです。ジャフコ以外にも日本アジア投資や日本エンタープライズ・ディベロップメント(NED)、日本インベストメント・ファイナンスなど4〜5社が掲載されていたと記憶しています。 私はその時に初めてベンチャーキャピタルという仕事を知りました。リスクをとって、ベンチャー企業や中小企業に投資し、成長支援をして、株式上場までお手伝いをする。そして、成果に応じてキャピタルゲインを得るという仕事に魅力を感じて、ベンチャーキャピタル業界を第一志望として就職活動を開始しました。例えば、投資をした1億円が上場して評価額が100億円になれば粗利は99億円という世界です。他にはなかなかない面白いビジネスだと思いました。 ベンチャーキャピタルの仕事とジャフコの特徴 「誰もが知るジャフコですが、改めて事業内容と特徴についてお話しください。」 ベンチャーキャピタルの仕事は、機関投資家を含めた出資者からお金をお預かりして、ファンドを設立するところから始まります。それから有望な起業家への接触を行い成長性のあるスタートアップへ出資をします。出資後は、成長に必要な人材の採用、販路拡大のためのマーケティング活動などを含めて様々な形で経営をサポートしていきます。企業の売上と利益が上がり、株式上場やM&AなどでExitができれば、ようやく保有している株式が流動化しますので、売却して現金化し、ファンドに戻して、ファンドの出資者に分配します。これが一連のサイクルです。 ジャフコは、昨年(2023年)ちょうど50周年を迎え、今年で51年目になります。現存する企業では日本最古で最大級のベンチャーキャピタルです。累計の投資先上場会社数が約1000社超、累計のファンド運用額が1兆円を超えており、これだけの実績があるベンチャーキャピタルは世界的に見ても少ないと思います。日本を中心に、アメリカ・アジアで多様な業種のスタートアップに投資をしています。日本国内では、ベンチャーキャピタル事業とバイアウト事業を実施しています。アメリカではIcon Ventures、アジアではJAFCO Asiaという社名で、ベンチャーキャピタル事業を行っています。 豊富な資金をもとに、スタートアップの資金調達に併せて、大型の出資も提供できます。また、新卒採用、キャリア採用を行い、豊富な人員が揃っていることも特徴の一つです。ベンチャーキャピタル部門に約40名、投資先のスタートアップの支援をするビジネスディベロップメント部門に約20名、全てフルタイムのメンバーなので、手厚く投資先の成長支援を行うことが可能です。 「現在、上場しているベンチャーキャピタルは何社あるのでしょうか?」 当社に加えて、日本アジア投資さん、フューチャーベンチャーキャピタルさんですね。ベンチャーキャピタルは、出資者と株主という2つのステークホルダーがいる特性上、上場する難しさがあります。株主の方にとっては、株価や配当を上げる意味でROE(自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)が重要です。一方で、この事業は景気が悪い時にも投資を継続することが重要で、そのためには潤沢な資金をあらかじめ持っておく必要もあります。資金を確保しつつも、ROEを上げるために、自己資本を含めて余計な資産を持たないという経営をしなくてはならないのです。そうはいっても、エクイティファイナンスができるという上場のメリットは大きいです。当社も昨年、CBで150億円の資金調達をしました。 ベンチャーキャピタリストの魅力と輝かしい実績 「ベンチャーキャピタルリストとして32年のキャリアがありますが、その魅力ややりがい、そして大変さを教えてください。」 自らが主人公として、事業を立ち上げる起業家とは立場が違いますが、出資を通じてスタートアップの成長に関わることができる、役に立つことができる、ということにはやりがいがあります。新しい産業を創出し、経済を良くしていくことの社会性は大きいです。今後の日本経済においても、重要な役回りだと思います。また、大変な仕事ですが、長く続けていくことによって、自分としても成果を上げられるビジネスです。 ただ、難しいのは、失敗がつきもので、投資先の半分くらいはうまくいかないということです。落ち込みながらもチャレンジし続ける気持ちが重要です。常に投資候補先の経営者とコミュニケーションとりながら、新しい投資をして、成長支援することを繰り返しています。 「輝かしい実績を作ってこられましたが、これまでのIPOやM&Aの数を教えてください。」 IPOは途中から関わった会社も含めると22社で、M&Aは13社の合計35社です。持分譲渡は除いています。 「Forbes Japanの「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」に3回選出、「Japan Venture Awards」でベンチャーキャピタリスト奨励賞も受賞されています。それぞれどのような賞なのでしょうか。」 Forbes Japanの「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」は、Forbes Japanという月刊誌が、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の協力のもと、会員企業にアンケート調査を行い、その回答から作成した10位までのランキングです。1年間のIPOとM&Aなどによって得たキャピタルゲインを対象としてランクキングを作成しており、2023年版は4位に選んでいただきました。私としては、投資先の経営者が素晴らしかったに過ぎないと考えています。 「Japan Venture Awards」のベンチャーキャピタリスト奨励賞は、中小機構がバックアップして1年に1回開催されているベンチャーアワードです。スタートアップの経営者の表彰がメインですが、何年か前からベンチャーキャピタリスト年間2〜3人が選ばれも表彰されているようです。こちらもたまたまご縁があって、2020年に選出していただきました。 投資の際に重視する「経営者と事業内容のマッチング」 「小沼様の投資の判断基準を教えてください。」 ひとことで言うのは難しいのですが、経営者の経営手腕を見ているという感覚でしょうか。その方らしい事業であることや、ビジョンが明確であること、そして、どう経営されているかなどを確認します。また、一人では経営はできませんので、幹部社員の採用をはじめとして、人の集め方・巻き込み方も重視しています。 「経営者と事業内容のマッチングも大切なのですね。」 そうですね。経営者と事業性の組み合わせ、市場機会をとらえるタイミングなどが、うまく噛み合っていると良いですね。例えば、私が全く経験したことがない建築の設計を事業とすることは、ミスマッチだと思うのです。その方にふさわしい、その方なりの事業をされていることが大切です。 サービスや商品が市場に適合している状態を示す、プロダクトマーケットフィット(PMF)という言葉があり、我々は、よく起業家に「それはPMFの状態ですか?」と質問します。同じように、起業家がその市場に合っているか、「ファウンダー・マーケット・フィット」とも言えるような状態が大切だと思います。また市場性も重要で、これから成長していく市場と成長が止まった市場とでは、やはり大きな違いがありますよね。
#ベンチャーキャピタル(VC)
DIMENSION株式会社
代表取締役社長 宮宗 孝光 氏

CFOは将来の計画を数値に落とす力を持つ重責者。信頼とロイヤリティでCEOを支える

メーカーからコンサルへの大きなキャリアチェンジ 「東京工業大学・大学院を飛び級で卒業されてからエンジニアとしてシャープに入社します。シャープではどんな仕事をしていたのでしょうか。」 レーザーダイオードの研究開発に少し携わった後、オプトデバイスに関する事業の立ち上げ、拡大に携わりました。オプトデバイスとは、電気を通電すると光る石のことで、照明のLED(発光ダイオード)やブルーレイディスクを読み取るレーザーダイオードなどが含まれます。私がシャープに入社した1998年は、視認性が高いLEDは高速道路の橙色の表示機のみにしか使われていませんでした。LED市場の広がりを予測したシャープは、事業を拡大させようとしているタイミングで、他用途での事業化に注力し始めました。 「その後、ドリームインキュベータに入社します。大きくキャリアチェンジすることになりますが、その背景・目的を教えてください。」 元々、太陽光発電に携わりたくてシャープに入社しました。当時のシャープは、太陽光発電やソーラーパネルにおいて、世界一のメーカーでした。しかし上記のとおり別の部署に配属され、太陽光発電に携わる仕事はできませんでした。私は「やりたいことをやるのが人生」だと思っていたので、早々に転職しようと決意し父親に相談しました。父は、電子デバイスの分野で有名な独立系商社の2代目社長でずっと経営に携わっていました。その父から、「何を言っているんだ。今はまだ会社のコストでしかないのだから、3年間は辞めずにご奉公しろ!」と、こっぴどく叱られました。そこで、トータルで3年半シャープに勤めてから退職しました。 その後、4ヶ月ほど次に何をするかを検討しました。元々経営に興味があったので、若くして経営に携われるコンサルティング業界に興味を持ちました。当時、コンサルタントとして有名だったのが、大前研一さんと堀紘一さんの2人。長く名が通っている方は、コンサルとして学ぶことがたくさんあるだろうと考え、門を叩こうと決めました。しかし、大前さんはすでにマッキンゼーを退職し、個人で仕事をされていたので、働かせてもらうのは難しいと判断しました。一方で、堀さんはボストンコンサルティンググループを退職し、ベンチャー企業を支援する会社(ドリームインキュベータ)を作ってメディアにも出られているタイミングでした。そこで、まだ創業2年目のドリームインキュベータに応募してなんとか採用してもらいました。 最低評価を受けたドリームインキュベータでの1年目 「ドリームインキュベータは優秀な人材の宝庫ですが、どのような事業を行っている会社でしょうか。また、宮宗さんはどういった仕事をされてきたのでしょうか。」 ドリームインキュベータは、創業期から大企業のコンサルティングで得たキャッシュをスタートアップに投資する事業をしていました。当時の組織は、バックオフィスの方を含めて40名くらい。経営陣、マネージャー、担当者のシンプルな3層構造の組織でした。MBAホルダーが多い中、私は他業界からの全くの未経験での入社でしたが、大企業のコンサルとスタートアップ投資の両方を担当することになりました。入社して早々に、あるベンチャー企業の社長プロジェクトでプレゼンをすることになったことは今でも鮮明に覚えています。1年目は右も左もわからず、全く仕事ができず、人事評価は最低ランクでした。そこから、必死に苦労して少しずつ仕事をマスターしていきました。 17名中10名が上場した勉強会 「その後、起業家との勉強会を主催され、参加メンバー17名中10名が上場するという素晴らしい成果を出していますが、開催に至った背景と目的、勉強会の内容について教えてください。」 起業家の勉強会は、私が最低評価を抜け出し、マネージャーに昇格した後の2006年にスタートさせました。自分でスタートアップの案件を発掘して、出資することができるようになった時期でした。 スタートアップと関わる中で、仕事には繋がらなかったとしても、未来を担う社長の皆様たちとの接点が切れてしまうのは残念だと感じることがありました。そこで、若手メンバーと学びたい経営者を集めて経験や苦労を話し合う機会となる勉強会を2人でスタートしました。今のようにSNSで採用や評価、事業拡大、IPOなどの情報を探すことが難しい時代でしたから、参加者も我々も多くのことを学びました。例えば、「上場したらIRはどうするのか」、「ストックオプションを付与した人が退職したときにはどのように会社の組織を維持するのか」など、議題を設定して話し合いました。この会で孫正義さんにもお会いしています。その後この勉強会からどんどん上場する起業家が出てきて、私自身もよい刺激とインプットをいただくことができました。 大切なことはすべてお客様から学んだ 「19年間にわたりドリームインキュベータで活躍しますが、そこで経験したことや学んだことを教えてください。」 スキル面はもちろんマインド面もすべてお客様から学びました。例えばM&Aについて、お客様の社長室長と投資銀行部門のトップの方からレクチャーしていただく機会をいただいたこともありました。「会社がどういう観点で買収案件を確認して、経営会議を通しているかを教えるから」と声をかけていただき、課題になる点も教わり、コンサルタントとして適切な対応をすることができました。 また、あるときは「逃げずにやり切る」ということを教わりました。上場直前までいっていたお客様がいらっしゃったのですが、監査を担当していた監査法人が解散してしまうというトラブルに見舞われました。その前後で、ライブドア・ショックやリーマンショックで景気が低迷し、資金繰りも悪化してしまい、結局上場ができなくなってしまいました。このままだと会社としての存続が難しくなってしまうということもあり、私が担当するよりも、創業者である堀さんや二代目社長に担当をした方が良い支援ができるのではと思い、担当変更を申し出たところ、そのような局面にもかかわらず社長は「私は君に頼んでいるんだ」と言ってくださったのです。 この言葉に私は奮起し、様々な企業を紹介することでなんとかその企業が持ちこたえるための支援に奔走しました。その後結局私の紹介ではなく、その社長ご自身のネットワークでつながった上場会社の100%子会社になることで、なんとか事なきを得ることとなりました。この社長の方からは、厳しい経営状況の中でのトップとしての姿勢を学びました。そこから15年ほど経っていますが、年に2回お食事の機会をいただき、様々なインプットをいただいています。このような経験を基に「逃げずにやり切る」ということは、私の軸の一つになったと思います。 上記のようなスタープレイヤーの方々の影響を受けて、必死に仕事をしていく中で、力がついていったという感覚です。私は、若いときの苦労は買ってでもしておいた方が良いと考えています。そうでないとリーダーにはなれない。また苦労した経験は絶対に後で活きます。ただ、今の時代には、ブラックな働き方といわれてもおかしくないので、誰にでもお勧めできることではないです。なんでも費用対効果が高い方やショートカットする方法を重視する方もお見受けしますが、それが仇となることもあるのではないかと思います。
#ベンチャーキャピタル(VC)
i-nest capital株式会社
代表パートナー 山中 卓 氏

「多様なVCが多様なスタートアップを育てるエコシステムの発展に寄与したい」、その思いにたどり着く道程とは

「業を興したい」という思いを持ち銀行からVCへ転身 「山中さんは東京大学卒業後、日本興業銀行に就職します。それから9年後にベンチャーキャピタルに転職しますが、そこに至るまでの経緯について教えてください。」 私は、大学卒業後の1994年に日本興業銀行(現:みずほ銀行)に入社しました。バブルの時代、1990年は日本興業銀行の時価総額が世界1位だったのです。ジャパン・アズ・ナンバーワンの頃ですね。しかし、その後、銀行業界全体が下り坂の時代に突入します。私が勤めていた1994年から2003年までは、坂道を下っていった9年間でした。入行してしばらく経つと公的資金が入り、2000年にはみずほグループになりました。私に限らず、興銀に入行した人は行名のとおり、業を興したいという気概を持っていたと思いますが、当時は業を興すというよりは、金融庁の監督に従って公的資金を返済していかなくてはならないという時期でした。 そんな時、興銀で机を並べてお世話になっていた先輩が、みずほ証券とNTTドコモとインターネット総合研究所という3社のジョイントCVCであるモバイルインターネットキャピタルに出向しました。そして、その先輩にお誘いいただき、私も転職することにしたのです。ちょうど1999年にマザーズ市場ができて上場が身近なものになってきていました。私が転職した2003年はまだVC業界は小さかったのですが、業を興すという仕事は、まさにこの業界でこそできるのではないかと思い、転職を決意しました。 「モバイルインターネットキャピタルはどのような特徴があるベンチャーキャピタルでしたか。」 IT系を中心にオールステージに投資をしているVCです。NTTドコモが、iモードで世の中を席巻していた頃に、携帯電話を使った次のサービス、次のソリューションを開拓していこうという趣旨で作られました。社名を変えた方がいいのではないかと議論された時期もありましたが、変えずに今に至っています。 「モバイルインターネットキャピタルでは、転職して12年で社長に就任されていますよね。」 私がモバイルインターネットキャピタルに転職した時は30歳前で、当時、一番若いキャピタリストでした。そこから経験を積み、12年後に社長に抜擢いただき、3年間社長を務めました。また、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA) 理事もさせていただきました。モバイルインターネットキャピタルで、キャピタリストとして一から育てていただいたと言っても過言ではありません。 独立後の1号ファンドでは5社がエグジット 「その後、2019年に現在のi-nest capitaを創業されています。その経緯を教えてください。」 3年間社長を経験すると、独立して自分で会社を経営してみたいと思うようになりました。そうは言っても、独立するにもトラックレコードが必要です。12年かけて自分自身のトラックレコードができたこと、社長としてファンドの運用経験を積めたことから、「タイミングがきた」と感じ、独立することにしました。私のわがままでの独立なので、申し訳なさも感じていました。しかし、結果的にはみずほグループにもNTTドコモにも、i-nest capitalのファンドにご出資いただいているんです。本当にありがたく、今も恩返しをするために活動しています。 「i-nest capitaの特徴を教えてください」 i-nest capitalでは、成長領域を広く捉えていきたいと考えており、IT系の企業が中心ですが、それ以外の先端技術の会社やメーカーなどにも幅広く投資しています。ステージはオールステージです。現在は、1号ファンドを組成して3年半が経ちました。39社に投資をしており、そのうち5社がエグジットしています。3社がIPO、2社がM&Aですね。全体で73億円のファンドで、現時点で投資しているのは6割弱です。その投資額は、エグジットした5社でほぼ回収できています。この実績を踏まえて、現在は2号ファンド設立の準備をしているところです。 ベンチャーキャピタリストの魅力と苦労 「山中さんはベンチャーキャピタリストとして20年のキャリアをお持ちですが、その魅力と大変さをお聞かせください。」 新たな産業を生み出し、育てていけることが魅力です。私もだいぶ年齢を重ねましたので、投資先の起業家はほぼ年下の方になりました。ベンチャーキャピタリストは、次の世代を担う企業を育てて、次の世代の方々を応援するという、夢がある素晴らしい仕事だと思います。日本には、これまでも素晴らしい企業がたくさんありましたが、新陳代謝をしていってこそ、次の活力が生まれてくると考えています。それが次の世代に対する責務だと考えて、頑張っています。 大変さについては、なんといってもファンドレイズ(ファンドの資金調達)ですね。お金をお預かりできないと仕事が始まりません。「お金を出してください」「はい、出します」と、そんな簡単な話ではありませんからね。ファンドレイズの期間は、ファンドレイズのことが片時も頭から離れません。これを果たさなければ組織は解散となり、従業員全員が路頭に迷うことになります。この業界に入るまでは、ファンドレイズがこんなにも大変だとは思ってもみませんでした。 「山中さんの投資基準を教えてください。」 最終的な判断基準は、ファンドの期間内に目標以上のリターンを得られると我々が評価した会社であることです。具体的な目標は、ホームページにも記載していますが、「投資回収倍率(MoC)3倍以上、IRR20%以上(グロス)」です。目標以上のリターンを得られると判断するための要素として重視しているのは、社長、経営チーム、取り組んでいるテーマなどです。レイターステージの会社であれば、ある程度事業が成り立っていることが証明されていますので、計画の確度を見ます。この条件で投資をして、IPOまでたどり着けるのか。たどり着いた時に、目標以上のリターンを得られるのか。ステージが進めば進むほど、投資の条件面をしっかり見ていく必要があります。一方で、シードやアーリーステージの会社は、株価(時価総額)は低いです。その株価で投資をして損をするということは、事業全体が上手くいかないということです。ですから、株価の水準よりも社長、経営チーム、取り組んでいるテーマに対する評価の比重が高くなります。 「投資において社長やCFOがどんな方であるかは、大切なポイントなのですね。」 比重として大きいです。社長には、人を巻き込む力が重要です。その一方で、完璧な人間はいませんので、投資という視点では、CFOの存在も重視します。CEOの右腕として、特にレーターステージではどんなCFOの方がいるのかも判断材料になりますね。 「これまでの投資の中で、印象に残っているベンチャーはありましたか。」 私は100社以上に投資をしてきましたので、たくさんの思い出があります。いい思い出も多いですが、「こんな目に合うのか」という痛い思い出もあります。 最近の良い例としては、カバーというVTuberのプロダクション会社が印象に残っています。我々が投資した3年前の段階でも非常に熱量の高い会社でした。しかし、オンライン中心の新しいビジネスモデルであり、ファンの熱量が高い分、これまでのファンが批判者となり炎上に繋がる場合もあるといった難しさもありました。こうした難しさを内包しながらも、今年3月に非常に素晴らしいIPOをされました。改めて、新しい領域にチャレンジすることは、リスクもありますが、大きなリターンが得られるものだと感じました。振り返ると、私自身は、VTuberに詳しいわけでも、投げ銭としてお金をつぎ込んだ経験もありませんでしたので、インサイトが足りなかった側面もありますが、逆に客観的に見ることができたという利点もあったと思います。