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DIMENSION株式会社
代表取締役社長 宮宗 孝光 氏

CFOは将来の計画を数値に落とす力を持つ重責者。信頼とロイヤリティでCEOを支える

メーカーからコンサルへの大きなキャリアチェンジ 「東京工業大学・大学院を飛び級で卒業されてからエンジニアとしてシャープに入社します。シャープではどんな仕事をしていたのでしょうか。」 レーザーダイオードの研究開発に少し携わった後、オプトデバイスに関する事業の立ち上げ、拡大に携わりました。オプトデバイスとは、電気を通電すると光る石のことで、照明のLED(発光ダイオード)やブルーレイディスクを読み取るレーザーダイオードなどが含まれます。私がシャープに入社した1998年は、視認性が高いLEDは高速道路の橙色の表示機のみにしか使われていませんでした。LED市場の広がりを予測したシャープは、事業を拡大させようとしているタイミングで、他用途での事業化に注力し始めました。 「その後、ドリームインキュベータに入社します。大きくキャリアチェンジすることになりますが、その背景・目的を教えてください。」 元々、太陽光発電に携わりたくてシャープに入社しました。当時のシャープは、太陽光発電やソーラーパネルにおいて、世界一のメーカーでした。しかし上記のとおり別の部署に配属され、太陽光発電に携わる仕事はできませんでした。私は「やりたいことをやるのが人生」だと思っていたので、早々に転職しようと決意し父親に相談しました。父は、電子デバイスの分野で有名な独立系商社の2代目社長でずっと経営に携わっていました。その父から、「何を言っているんだ。今はまだ会社のコストでしかないのだから、3年間は辞めずにご奉公しろ!」と、こっぴどく叱られました。そこで、トータルで3年半シャープに勤めてから退職しました。 その後、4ヶ月ほど次に何をするかを検討しました。元々経営に興味があったので、若くして経営に携われるコンサルティング業界に興味を持ちました。当時、コンサルタントとして有名だったのが、大前研一さんと堀紘一さんの2人。長く名が通っている方は、コンサルとして学ぶことがたくさんあるだろうと考え、門を叩こうと決めました。しかし、大前さんはすでにマッキンゼーを退職し、個人で仕事をされていたので、働かせてもらうのは難しいと判断しました。一方で、堀さんはボストンコンサルティンググループを退職し、ベンチャー企業を支援する会社(ドリームインキュベータ)を作ってメディアにも出られているタイミングでした。そこで、まだ創業2年目のドリームインキュベータに応募してなんとか採用してもらいました。 最低評価を受けたドリームインキュベータでの1年目 「ドリームインキュベータは優秀な人材の宝庫ですが、どのような事業を行っている会社でしょうか。また、宮宗さんはどういった仕事をされてきたのでしょうか。」 ドリームインキュベータは、創業期から大企業のコンサルティングで得たキャッシュをスタートアップに投資する事業をしていました。当時の組織は、バックオフィスの方を含めて40名くらい。経営陣、マネージャー、担当者のシンプルな3層構造の組織でした。MBAホルダーが多い中、私は他業界からの全くの未経験での入社でしたが、大企業のコンサルとスタートアップ投資の両方を担当することになりました。入社して早々に、あるベンチャー企業の社長プロジェクトでプレゼンをすることになったことは今でも鮮明に覚えています。1年目は右も左もわからず、全く仕事ができず、人事評価は最低ランクでした。そこから、必死に苦労して少しずつ仕事をマスターしていきました。 17名中10名が上場した勉強会 「その後、起業家との勉強会を主催され、参加メンバー17名中10名が上場するという素晴らしい成果を出していますが、開催に至った背景と目的、勉強会の内容について教えてください。」 起業家の勉強会は、私が最低評価を抜け出し、マネージャーに昇格した後の2006年にスタートさせました。自分でスタートアップの案件を発掘して、出資することができるようになった時期でした。 スタートアップと関わる中で、仕事には繋がらなかったとしても、未来を担う社長の皆様たちとの接点が切れてしまうのは残念だと感じることがありました。そこで、若手メンバーと学びたい経営者を集めて経験や苦労を話し合う機会となる勉強会を2人でスタートしました。今のようにSNSで採用や評価、事業拡大、IPOなどの情報を探すことが難しい時代でしたから、参加者も我々も多くのことを学びました。例えば、「上場したらIRはどうするのか」、「ストックオプションを付与した人が退職したときにはどのように会社の組織を維持するのか」など、議題を設定して話し合いました。この会で孫正義さんにもお会いしています。その後この勉強会からどんどん上場する起業家が出てきて、私自身もよい刺激とインプットをいただくことができました。 大切なことはすべてお客様から学んだ 「19年間にわたりドリームインキュベータで活躍しますが、そこで経験したことや学んだことを教えてください。」 スキル面はもちろんマインド面もすべてお客様から学びました。例えばM&Aについて、お客様の社長室長と投資銀行部門のトップの方からレクチャーしていただく機会をいただいたこともありました。「会社がどういう観点で買収案件を確認して、経営会議を通しているかを教えるから」と声をかけていただき、課題になる点も教わり、コンサルタントとして適切な対応をすることができました。 また、あるときは「逃げずにやり切る」ということを教わりました。上場直前までいっていたお客様がいらっしゃったのですが、監査を担当していた監査法人が解散してしまうというトラブルに見舞われました。その前後で、ライブドア・ショックやリーマンショックで景気が低迷し、資金繰りも悪化してしまい、結局上場ができなくなってしまいました。このままだと会社としての存続が難しくなってしまうということもあり、私が担当するよりも、創業者である堀さんや二代目社長に担当をした方が良い支援ができるのではと思い、担当変更を申し出たところ、そのような局面にもかかわらず社長は「私は君に頼んでいるんだ」と言ってくださったのです。 この言葉に私は奮起し、様々な企業を紹介することでなんとかその企業が持ちこたえるための支援に奔走しました。その後結局私の紹介ではなく、その社長ご自身のネットワークでつながった上場会社の100%子会社になることで、なんとか事なきを得ることとなりました。この社長の方からは、厳しい経営状況の中でのトップとしての姿勢を学びました。そこから15年ほど経っていますが、年に2回お食事の機会をいただき、様々なインプットをいただいています。このような経験を基に「逃げずにやり切る」ということは、私の軸の一つになったと思います。 上記のようなスタープレイヤーの方々の影響を受けて、必死に仕事をしていく中で、力がついていったという感覚です。私は、若いときの苦労は買ってでもしておいた方が良いと考えています。そうでないとリーダーにはなれない。また苦労した経験は絶対に後で活きます。ただ、今の時代には、ブラックな働き方といわれてもおかしくないので、誰にでもお勧めできることではないです。なんでも費用対効果が高い方やショートカットする方法を重視する方もお見受けしますが、それが仇となることもあるのではないかと思います。